【大阪・関西万博】[29]ブラジル館で「食料ガバナンスに関する対話」を開催


世界の人口は70億人を超え、人類はいまだに経済の安定、教育、技術革新、環境責任といった数多くの課題に直面している。
そのような背景のなか、2025年大阪・関西万博のブラジル館では、ブラジル貿易投資振興庁(ApexBrasil)の主催により、8月13日に「食料ガバナンスに関する対話」が開催された。

TCUによるガバナンスの枠組み

イベントでは、ブラジル連邦会計検査院(TCU)のアウグスト・ナルデス判事が講演を行った。
判事は、国の最高検査機関の役割について「公共資源を国益のために活用できるよう確保すること、州政府が人類共通の課題に的確に対応できるよう支援すること」であると強調した。
講演では、TCUが策定した「ガバナンス・持続可能性・マネジメント指標(iESGO)」が紹介された。
この指標は、公共活動がどの程度ガバナンス・プラクティスに適合しているかを確認するもので、国連からも支持を得ている。387の組織を対象とした2018年と2024年の比較データでは、リーダーシップや戦略、持続可能性に関する改善が確認された。
ナルデス判事は「TCUは罰則を与えるだけでなく、予防も行う」と語り、ブラジルの発展と持続可能性の両立を強調した。
さらに、気候変動を中心に政府活動を評価する「ClimateScanner」についても紹介。
この手法はブラジル国内14州に加え国外でも導入されており、万博全体が発信する「地球は現状を維持できない」というメッセージと歩調を合わせている。

アグロビジネスと食料ガバナンス

講演では、ブラジルのアグロビジネスについても触れられた。2025年には国のGDPに占める割合が29.4%に達し、同年の農業・畜産業の生産総額は1兆5,200億レアルに上る見込みで、前年比12.3%の増加が予測されている。
ナルデス判事は、こうした成長を支えるためには「食料ガバナンスが公共ガバナンスの原理に基づき、より透明で洗練された形で進められる必要がある」と指摘した。具体的には、リーダーシップの明確化や意思決定の透明性強化が求められるという。

ブラジルの経験と国際的役割

ブラジルはすでに国家学校給食プログラム(PNAE)、食料購入プログラム(PAA)、国家食料栄養安全保障評議会(CONSEA)といった取り組みを通じて、豊富な経験を積んでいる。
また、国際社会においても世界食料安全保障委員会(CFS/FAO)や南南協力に積極的に関わり、飢餓対策の分野で他国のモデルとなっている。
気候変動や地政学的危機に直面する現在、ブラジルには社会的公正や持続可能性、食料主権を基盤に、世界の食料安全保障の強化に向けて責任ある役割を果たすことが期待されている。

食料ガバナンスに関する対話

今回の「食料ガバナンスに関する対話」は、ブラジルが有する豊かな実績と未来への責任を示す場となった。
アグロビジネスの成長が加速する一方で、持続可能なガバナンスの実現が不可欠であることが示されたといえる。
ブラジルは国内外での経験を活かし、国際社会と連携しながら、食料安全保障という人類共通の課題に応えていく姿勢を改めて示した。


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