【大阪・関西万博】[40]ブラジル館で日系起業家の活躍を紹介する新刊出版イベント開催
ブラジル館で日系起業家の活躍を紹介する新刊出版イベント開催。
10月3日(金)、大阪・関西万博のブラジル館で、横山和子氏とセーラ・ルイーザ・バーチュリ氏による共著『日系・トランスナショナル起業家研究―ブラジル、メキシコ、日本の事例から(Transnational Diaspora Entrepreneurship: Cases from Brazil, Mexico and Japan)』の出版記念イベントが開催されました。
横山和子氏は、元東洋学園大学の教授で、現在はICDジャパン(International Career Development社)の代表取締役を務めます。
共著者のセーラ・ルイーザ・バーチュリ氏は、東洋学園大学現代経営学部の教授です。
同イベントでは、本書の研究を紹介するショートビデオとともに、著者への質疑応答や交流の時間が設けられた。
横山和子氏は開催への感謝を延べ、「日系人についての理解を深めるよい機会です」と述べました。
セーラ・ルイーザ・バーチュリ氏は、万博という国際舞台で本イベントを実施することの大きな意義を強調しました。
また、ブラジル館館長であるパブロ・リラ氏は「日本ブラジル友好交流年(外交関係樹立130周年)の年に、両国の強いつながりを示すイベントを開催できたことは光栄です」と述べ、開催の意義を強調しました。
現在ブラジルには約200万人の日系人が暮らしており、日本国外の最大規模の日系コミュニティを形成しています。
著書『日系・トランスナショナル起業家研究―ブラジル、メキシコ、日本の事例から(Transnational Diaspora Entrepreneurship: Cases from Brazil, Mexico and Japan)』。
同書は、ラテンアメリカに居住する日系人やトランスナショナル起業家の事例を紹介しつつ、彼ら彼女らの起業家精神が「協働の促進」「機会の共有」「計画的リスクの受容」に支えられていることを示すものです。
ブラジル、メキシコ、日本に住む起業家たちは、それぞれの出身国や居住国の文化的バランスを保ちながら社会に統合し、資源の活用や信頼関係の構築を通じて事業を持続しています。
こうした「埋め込み理論」の実践は他の地域にも応用可能であり、文化的・社会的・制度的なつながりが積極的に整備されれば、起業活動はさらに活性化することが示唆されます。
本書では、今後の起業家支援体制やネットワーキングなどの改善に向けて、12の提言を示しています。
・ラテンアメリカ諸国との社会保障協定の拡大
・外国人起業家に向けたデジタル金融サービスの整備
・自治体による多言語情報提供の充実
・DXを活用した日系起業家支援プラットフォームの構築
・女性起業家支援ネットワークの整備
・日系子弟への日本語教育支援強化
・日系コミュニティ間ネットワーキングの拡充
来訪者
同イベントは、ブラジルにおける日本人・日系人起業家の現況や、ブラジルと日本をつなぐダイナミックな関係を学ぶ貴重な機会となりました。
さらに、移民問題やビジネスに関心のある方はもちろん、新たな視点やつながりを求める方々にとっても、有意義なひとときとなりました。
滋賀大学在学中のフクエ・シズさんは、本書を通じて日系人への理解が深まったと述べました。
同大学で学ぶイオ・サイトウさんは、「このような研究は未来のためにも重要です」と語っています。
さらに、同志社大学で社会学を教える藤本昌代教授は、「お二人の研究は、多文化アントレプレナーシップの重要性を示しています」と、イベント参加の感想を述べました。
同書は、多文化的背景を持つ起業家の活動が、成長やイノベーションにどれほど大きな可能性を秘めているかを明らかにし、日系・トランスナショナル起業家精神を世界に示すためのロードマップを提供しています。
なお、同書は2025年10月に英語版が刊行され、日本語版も予定されています。