【連載】ブラジル音楽ツアー体験記(3)|情報ゼロから現地ツアーに参加してみた!

Photo:O-DAN
4月20日リオデジャネイロ
ブラジル3日目。
ようやくブラジルの気候にも慣れ、時差ボケによる倦怠感もからだから取れてきました。
スッキリとした意識で改めてイパネマの街並みを見ますと、ゆるい空気感が形作る、まったりとした人々の生活感を観ることができます。
店員さんの接客、陳列されている商品のデザイン、建物デザインなど、日本にいるときには感じられない、なんともいえない街のユルさが、ブラジルの魅力のひとつと言っても過言ではないと思います。
そんなスッキリとした状態で、この日はお昼に地元民の聖地であるサン・クリストヴァンのフェイラ(市場)に向かいます。
サン・クリストヴァンはブラジル北部を体験できる、かなりカオスなフェイラです。
ドーム状の建物の中にいくつものお店があり、平日でもかなりの人出でにぎわう人気観光スポットです。
イメージとしては、中野や阿佐ヶ谷のサンロード商店街と浅草と西成を割ってブラジルを足した(?)ような雰囲気です。
イパネマからウーバー・タクシーで20分ほど。
大げさでなく、東京ドームほどの広大な敷地の中にひしめき合うようにフェイラが立ち並んでおります。

珍しい食材やお酒、民芸品も売っており、お土産ものも豊富です。
ドーム状の建物内はかなり広く、しかも通路が放射状に広がっており、すべてのお店を回るのにかなりの時間を要します。
ですが、どのお店も日本では見られないような珍しいもの、デザインで埋め尽くされており、見ているだけでかなり楽しめます。
しかも、ところどころで生演奏が催されており、日本でいうところのフード・コートのようなスペースで家族と一緒に爆音のロック・バンド、フォホー、サンバを楽しむことができます。

中にはブラジル版ゲーム・センターやカラオケ、タピオカ屋(?)、怪しい日本のアニメ・グッズ屋もあり、老若男女、カップル、家族問わず、たくさんの人が楽しんでおります。
これでもかとブラジル要素が詰まった地元民の聖地サン・クリストヴァン。
リオに来られた際はぜひ一度は覗いてみて下さい。
ちなみに私はこの後、サンパウロも含めてさまざまな観光スポットを訪れましたが、インパクトという点ではこのサン・クリストヴァンが一番でした。
お店、雰囲気、食べ物、とにかくすべてが日本では体験できないものばかりでした。
夕方までサン・クリストヴァンで北部の空気を楽しみ、宿に戻って夜のライブまで少し休憩。
夜は前日から引き続き、野外フェスのサンセット・リオに向かいます。
サンセット・リオは3日間行われますが、本日が最終日ということで名残惜しさを感じつつも会場に向かいます。
まだ蒸し暑い気候で火照るからだに冷たいビールを流し込み、足袋ぐらいあるんじゃないかと思わせるぐらい大きなパステウを頬張ります。
パステウはいわゆるマクドナルドでも見かけるミート・パイですが、ブラジルのパステウは非常に大きく、お店によっては大人の顔ぐらいの大きさで提供されることもあります。
ブラジルの人たちは食べ歩きのおやつ感覚で食べていますが、私は1個食べただけでその日の夕食は完了です。
ビールとパステウを楽しんでいると、大歓声の中、メイン・アーティストがステージに登場しました。
今夜のメイン・アーティストはブラジルを代表するバンドリン奏者の「アミルトン・ヂ・オランダ」です。
バンドリンは日本だとあまり馴染みがない楽器ですが、ショーロによく使われる楽器で8弦が一般的です。
ですが、アミルトンは10弦仕様のものを使用することにより幅広い表現力を可能にし、ジャズやファンク、ポップスなども自由自在に表現しています。
アミルトンはショーロの名手でもありますが、表現の枠はそれだけにとどまらず、ジャズ的なアドリブとインタープレイも持ち味としており、超絶なテクニックにかなり衝撃を受けました。

ショーは現代的なスタイルの曲が大半でしたが、それでもちゃんとブラジルの伝統的な音楽の香りをきちんと感じることができ、非常に感銘を受けました。
ブラジルのミュージシャン全般的に言えるのかもしれませんが、音楽に革新性を持たせながらも、どこかサンバやショーロ、フォホーなど、伝統的なスタイルを感じることができるのは、やはり先達へのリスペクトが高いせいかもしれないと思いました。
バック・バンドも凄腕揃いで、変拍子からハイ・テンポのサンバ・ビートまで、余裕を感じる安定感で観客を沸かせていました。
ニューヨーク・ジャズ的な高度なインタープレイがありながらも、4分の2拍子のおおらかでウネリを感じるビッグ・ビートも生み出す懐の広さ。
ブラジルのミュージシャンの層の厚さには驚嘆するばかりです。
歌で魅了し、超絶テクニックのインタープレイで圧倒し、強靭なグルーブで感動する、濃厚なステージングが続いていきます。
ショーが一段と盛り上がりを増したところでゲスト・ミュージシャンが紹介されました。
なんと現代サンバの貴公子とも言われるサンバ歌手、「ヂアゴ・ノゲイラ」が登場です。

さらに大きなウネリをあげるビートに伸びやかなヂアゴの歌声が混ざり合い、観客の興奮も最高潮に達します。
やはり人気の歌手だけあって、ヂアゴの歌う歌すべて観客大合唱で、歌えない私も不思議な一体感を感じながら歌の雰囲気に浸れました。
先日から体験はしていましたが、ブラジルのライブはみんなが大合唱。
この一体感はまず他では味わえないと思いました。
ヂアゴの歌が入ってからは一段とバンドのグルーブと勢いが増していたように感じました。
それに加えて、アミルトンの超絶的なアドリブにヂアゴのスキャットも入っていたりと、ジャズ好きも唸るような緊張感あふれる場面もあり、最後のアンコールまで踊るからだが止まらないほど楽しめる内容でした。
男性も女性も若い人も年配の人も、みんな関係なく歌って、踊って、笑って、楽しんで、今日という日を悔いなく過ごしているように感じました。
サンセット・リオの3日間は今日で最後。
ブラジル上陸直後の濃厚な3日間の野外フェスは私のブラジル旅のスタートとしては最高でした。
サン・クリストヴァンの散策も相まってクタクタになった私は、隣のファベーラの鶏の鳴き声も気にならないほどの深い眠りにつきました。
4月21日リオデジャネイロ
この日は夜のライブがない日でしたので、朝からイパネマのおしゃれな街並みを散策することに。
朝食は、今回の旅で何度もお世話になるブラジル式量り売りレストラン。
ブラジルでは、日本では馴染みが薄い「量り売り」のレストランが数多くあり、というより量り売りが一般的なスタイルです。
入口で大きいお皿を取り、自分の好きな料理を盛り付けていき、最後に計量台に乗せてお会計。
少し驚いたのが、どの料理もクオリティが高く、新鮮な野菜と日本人にも食べやすい味付けで大変おいしかったです。
おかげでお代わりもしてしまい、かなり食べ過ぎてしまいました。

午後はイパネマで唯一の本屋併設CDショップ「リヴラリア・ダ・トラヴェッサ」へ。

1階が本屋、2階がCDショップとカフェが併設されたかなりおしゃれなお店です。
中は吹き抜けとなっており、休憩スペースで本を読みながらゆったりと過ごすこともできます。

ブラジルに来てからは野外フェスなど、激しい場面が多かったですが、本とCDに囲まれて現実を忘れながら飲むコーヒーが大変おいしく、この旅で初めてゆっくりと時間が流れる空間を楽しむことができました。
その後はイパネマのレコード屋さんめぐりなどで一日中街を歩きました。
一日の終わりにスマホの歩数計を確認したら15,000歩。
朝の食べ過ぎを消費することができた気がします。


