【連載】ブラジル音楽ツアー体験記(2)|情報ゼロから現地ツアーに参加してみた!

Photo:O-DAN
4月18日リオデジャネイロ・イパネマ
ウーバー・タクシーに乗り込み、早速宿に向かいます。ちなみにブラジルは世界一のウーバー大国。いわゆる黄色タクシーよりも利用率が高いです。理由としては予め行き先を設定することによってボッタくり被害に合わない。運転手の身元が管理されているので犯罪に巻き込まれにくいという点が主に挙げられます。その昔、黄色タクシーしかない時代は言葉の壁もあり、ボッタくりなどの被害も珍しく無かったとかなんとか。今でも黄色タクシーを使うのは控えろとアドバイスされます。
空港から宿泊先のイパネマまで車でおよそ30分ほどですが、途中、リオのサンバ・カーニヴァル開催地である全長1㎞にもわたる巨大ドームのサンボドロモを横目に見たり、いわゆる低所得層が多く住むファベーラと言われる明らかに異質な雰囲気を放つ広大な崖地の住宅街を見たりしながら宿へ向かいます。
初日から5日目まではイパネマ海岸近くの民宿で宿泊します。今回エアービーアンドビーで宿を手配したのですが、海外民宿の場合は実際に現地に着くまでどんなロケーションでどんな状態のお部屋なのか、着くまで分からないというガチャ要素が多少あります。
宿代をケチりすぎるととんでもなく治安の悪いエリアで一歩も宿の外に出られないということも珍しくないそうです。
これを読んでおられる方の中で近々ブラジル旅行に行かれる方は、予め滞在先がどういうエリアなのか、詳しい方やブラジル経験者の方にアドバイスを貰うことをおすすめします。
さて、私たちは滞在先ならびに家主の住むマンションへ。イパネマ海岸から徒歩5分ぐらいの抜群のロケーション。
家主は一人暮らしの女性で、彼女が住んでいるマンションの一室に滞在させて頂きました。日本人が珍しかったのか、かなり気さくな女性でいろいろリオについてお話してくれたり、日本ことを聴いてくれたりしていましたが、ポルトガル語が分からない自分はチンプンカンプン。
ポルトガル語でコミュニケーション取れる人が羨ましくなりました。
ちなみに今回私たちが滞在させてもらった民宿はイパネマ海岸至近のいわゆる高級マンションだったのですが、すぐ隣がファベーラでした。
ファベーラにはそのエリアごとに名前が付いており、私たちの民宿のすぐの隣のファベーラは「カンタ・ガーロ(鳴く雄鶏)」という名前がついていました。なぜ「雄鶏」なのかと首をかしげていましたが、間もなくその理由が判明します。
始終ひっきりなしに朝も夜も関係なくずっと「雄鶏」の「コケコッコー」の鳴き声が轟いているので、おかげで2日目までかなりの寝不足でした。(3日目には慣れました)

身支度と荷ほどきもそこそこに、夕方から今回の旅の主目的である、コンサートへ出発します。
今回のブラジル旅の目的はもちろん音楽との出会いなのですが、事前に各日程の主なアーティストのライブをピックアップしておりました。
幸運なことに、初日の4月18日から20日までの3日間、イパネマ海岸で「サンセット・リオ」という野外フェスが開催されており、豪華なアーティストが出演されるとのことで早速向かうのでした。
宿から歩いて5分ぐらいで会場に到着。海沿いの公園に特設ステージを設置した開放的なロケーション、煌びやかで綺麗な出店がフェスの雰囲気を盛り上げます。セキュリティゲートを抜けて心躍らせていざ入場。そういえば野外フェスって初めてかもしれない。
人生初めての野外フェスがブラジルというのは感慨深いものです。
ちなみにこのサンセット・リオ野外フェスの入場料はなんと無料でした、ただし、事前に個人情報登録とCPF確認が必要です。
ブラジルあるあるの一つなのですが、ブラジルのコンサートの予約などに個人情報登録を求められることが多く、その際にCPF(ブラジル納税者番号、ブラジルにおけるマイナンバー的なもの)を求められることが意外に多くあります。
実はこのCPF、日本人が日本に居ながら取得することができるそうです。(詳しくはブラジル領事館にお問い合わせ下さい)もちろん、そんなことはつゆ知らないので私は取得しておりません。
ちなみにブラジルでは無人コインランドリーなどの利用にもCPFを求められることがありますので長期滞在予定の方は併せてご検討ください。
今回のサンセット・リオ野外フェスはパスポート番号でも入場を許可してくれましたので難なく入場できました。
サンセット・リオは一日に2~3組のアーティストが出演しますが、この日の一番手はなんとトニーニョ・オルタ。
私はギタリストなので「もし今回の旅でトニーニョ・オルタやホベルト・メネスカルと会えたら最高だな」なんてぼんやり思っていたところ、いきなり初日に願いが叶いました。
こちらをお読み頂いている方の中にはブラジル音楽に相当精通されている方もおられるかと思いますが、前述のとおり私はまだブラジル音楽を聴き始めてかなり日が浅いこともあり、アーティストの演奏曲目などについては詳細記述ができない旨予めご了承ください。申し訳ありません。
ですが、なるべくそれ以外の情報は伝えられるようにしたいと思います。

トニーニョ・オルタとジョイス
オール・スタンディングですが、ステージ前含めて満員。会場に到着したころにはすでに演奏が始まっていましたが、みんな一緒に合唱したり、自由に踊っていたりと、静かに聴くスタイルの日本のライブ会場とは全く違う雰囲気です。
私はアメリカへ音楽旅に行ったこともありますが、単純比較はできませんがアメリカの聴衆よりもより自由に音楽を楽しんでいるような印象を受けました。
特に、知っている歌については全力で合唱する、例えが稚拙ですがオアシスのイギリス公演ばりの一体感の雰囲気は、曲もそこまで詳しくない言葉のわからない私でさえもブラジル人のエネルギーのうねりの一つに溶け込むように感じました。
トニーニョ・オルタが5曲ほど演奏したところでゲストのジョイスの登場です。
知る人ぞ知るMPBの大御所女性シンガー、御年77歳とは思えない若々しいオーラと艶のある歌声が大変素敵でした。
私はギタリストなのでギターばかりに目が行ってしまうのですが、ジョイスはアリア製のサイレント・ギター、トニーニョ・オルタはガット・ギターを使わず、終始フルアコ・ギターで演奏。
強烈なリズム感と核心をつくプレイスタイルをいきなり初日で堪能できたのでかなり満足です。こんなに素敵なショーが無料だなんて、恐るべしブラジル。
この日のトリの2組目はなんとこちらもMPBの超大御所マルコス・ヴァーリ。彼の名曲は沢山ありますが、「サンバ・ヂ・ヴェラオン(サマー・サンバ)」などは日本でもボサノヴァ・アーティストが演奏するなどして馴染みがあるかと思います。ちなみに彼の年齢を調べたらなんと81歳。

年齢を感じさせないマルコス・ヴァーリ
ステージ上の彼はどう見ても50代ぐらいにしか見えないぐらい若く、歌声はもちろんジャズ然としたピアノのインタープレイも全くよれることなくエネルギーに満ち溢れていました。
当然ではありますが、先ほどのトニーニョのバック・メンバーも含めて、バンド・サウンドはかなり洗練されており、特にリズム隊の強烈なビート感はアメリカのジャズ・ミュージシャンとも違う独特のうねりを感じます。
特にベースとバスドラムの絡みかたはブラジル人ミュージシャン特有のビート感があります。
マルコス・ヴァーリのショーは全曲有名曲ということもあり、聴衆は全曲大合唱。そこらでペアダンスが始まりもみくちゃにされます。
ショーの途中でバイーア出身の女性シンガー、ルエジ・ルナも加わりデュエットも交えて共演。伸びやかな歌声とマルコスにも負けない存在感で、かなり魅了されました。
初日にいきなり大御所たちの強烈なブラジル音楽の原液を浴びせられ、あっという間の3時間強。
何度も言うようですがこれが無料だなんて、恐るべしブラジル。
「もっと日本に居る時に復習しておけば良かったな」と思いつつも、それでも十二分に楽しむことができた濃厚な夜でした。
そして、長いフライトの疲れもあり、宿に戻ると倒れこむようにベッドにダウン。雄鶏の鳴き声を聞きながらブラジル旅初日が終わったのでした。

