【連載】ブラジル音楽ツアー体験記(1)|情報ゼロから現地ツアーに参加してみた!

Photo:O-DAN


【連載】ブラジル音楽ツアー体験記(1)|情報ゼロから現地ツアーに参加してみた!

私がブラジルに興味を持ったのはごく最近で、2024年中旬ぐらいからでした。
きっかけは私の師匠、プロジャズギタリストの加藤崇之さんの影響でした。
以前に師匠が、伝説のブラジル人ベーシストのルイザォン・マイアとバンドをやっていたというのは知っており、師匠のライブで度々演奏されるブラジル音楽に不思議な高揚感を感じ、憧れを感じておりました。

ほのかにふわっと、ブラジル音楽をプレイするという憧れがありましたが、いかんせんブラジル音楽の情報を集めるのは簡単ではなく、というよりジャズなどの欧米発祥の音楽と違い、ブラジル音楽の情報収集は私にとって少しハードルが高く、著名な評論家のブラジル音楽入門本なども購入したのはいいものの、なかなか全体像をつかむことができずにいました。

情報収集できるコミュニティがあれば、と悩んでいたところ、師匠から一軒のお店を紹介されます。
それが、この度のブラジル紀行文を寄せるきっかけとなった、ブラジルツアーを主催するお店、アパレシーダならびにマスターのウィリーさんです。

初めてアパレシーダに訪れたのは2024年末。
アパレシーダはブラジル音楽や雑貨、料理を扱うカフェとして2006年に東京の西荻窪で開店、その後2024年に高円寺に移転されました。
日本一(もしかしたら世界一といっても過言では無い)のブラジル愛好家であるウィリー・ヲゥーパーさんのブラジル愛にあふれる温かい雰囲気が魅力の店です。

私がお伺いした時は移転してそれほど時間がたっていない時期。
平日だったということもあり、ウィリーさんからブラジル音楽についての歴史や文化のお話をたくさんお伺いすることができました。
実はウィリー氏は「ボサノヴァの真実」「リアルブラジル音楽」などのブラジルの歴史や音楽を体系的に記した本を出版しており、お会いした際にも実に分かりやすく、ブラジル音楽について教えて頂きました。

店にお伺いした際に、私がブラジル音楽の情報収集に困っていると伝えると、自著を基にいくつかガイド本をご紹介して頂き、併せて過去にブラジルツアーを何度も開催していることも教えて頂きました。
次回のブラジルツアーについては未定、コロナでここ2年ほどツアーは開催しておらず、もし開催される際はお声がけ頂けるということで、お店を後にしたのでした。
まさかこの時、4か月後には自分がブラジルの大地を踏みしめているとは思わなかったですが。

少したって、2025年1月。
自身でブラジル音楽について調べている頃。
ウィリーさんのおすすめのブラジル関連書籍を手に入れ、体系的に歴史や音楽を学んだり、アパレシーダ主催のサンバ、ショーロ、ボサノヴァのセッションに足を運んだり、その他の都内のブラジル音楽のお店に足を運んだりして日々を過ごしていたのでした。

そんな中ある日、ウィリーさんから「もしかしたら今年にツアーを開催できるかもしれない」との連絡があり、詳細をお伺いするためお店に足を運んだのでした。
お店に行くと開口一番ウィリーさんから、「急に人数が集まり、今年ブラジルツアーを開催できるかもしれません。もしタイミングが合えば4か月後のゴールデンウィークには開催できる可能性がありますが、鈴木さんは参加されますか?」

今思えばなんで即答したのか自分でもわかりません。
自分がちょうど仕事が変わるタイミングで時間を作ることができたこと。
海外旅行などの為に少しだけお金を貯金していたこと。
何より今の自分がベストなタイミングでブラジル音楽の探求欲求が高まっていたこと。
いろいろなプラスの要因が重なり、私の初めてのブラジル旅行が、悩む間もなくあっという間に決まったのでした。

ブラジルツアーの参加表明をしてから、少し日にちたって1月中旬。
再びウィリーさんから連絡がありました。
「最低限の人数が集まりツアーが開催されることになりました。4月末には出発出来そうです」
あれよあれよという間に決まったブラジル旅行。
ポルトガル語の勉強はおろか、情報収集も何もしておらず、パスポートも再発行しなければならない状態でしたが、これも何かのお導き、腹を括りましょう。
行ってみないとわからない。
何よりわからない事を知るためにいくのだから、すぐに準備に取り掛かったのでした。
ブラジル旅行の出発は2025年4月17日、4月30日までリオデジャネイロ滞在、4月30日から5月5日までサンパウロ滞在の約3週間強の旅程でした。
参加者は自分とウィリー氏含めて6名。
事前に打ち合わせを重ねて旅程やライブ情報、リスクの共有や持ち物の確認を何回か行いました。
本場のサンバ、本場のボサノヴァ、本場のショーロ、あの不思議な魅力を持つ音楽がどのように生まれたのか、そしてどのような風土で、どのような人たちが音楽を生み出しているのか。
日本から飛行距離にして約18000㎞、日本から地球の反対側の国で生まれた素敵な音楽たち、行ってみれば何かわかるかもしれない、日本国内では分からないことが現地に行けばわかるかもしれない。
日に日に高まるブラジル音楽への探求欲求を胸に、いよいよ出発の日を迎えるのでした。

Photo:O-DAN

4月17日成田出発
今回のブラジルツアーはメンバーのスケジュールの都合上、先発隊と後発隊に分かれての出発となりました。
先発隊は私とウィリーさんとMさんの3名、残りの3名は一週間後にリオにて合流する予定です。
そして先発隊は2つの民泊に分かれて宿泊、私とウィリーさんのコンビでイパネマ海岸の近くの民泊、Mさんは少し離れたエリアにて宿泊しました。

飛行機は成田発のエミレーツ航空、ドバイ経由で片道計36時間の空の旅です。
非常に長いフライトではありましたが、個人的な感想としては機内食も美味しく、サービスも悪くなく、私とMさんは思ったよりも快適な空旅で満足でした。
私もMさんも海外旅行は初めてでは無いので長いフライトは慣れているつもりでしたが、しかしやはりブラジルは格別に遠い。

乗り継ぎのドバイ空港にて


アントニオ・カルロス・ジョビン空港に着いた時、ブラジルの大地を踏みしめた喜びよりも、やっと着いた、という安心感が勝りました。

到着したのは現地時間4月18日の夕方、日本ではまだ多少肌寒い日もある時期ですが、空港に降り立った途端に感じたのはたっぷりとした湿気と生暖かい空気感。
ブラジルに着いた実感を胸いっぱいに感じながら、時差ボケと長いフライトで疲れた重い体にムチを入れ、重いスーツケースを引きずるように歩いて空港のUberタクシー乗り場に向かったのでした。
(つづく)

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