なぜ若者はブラジルを目指すのか?クロストークが示した“アートとしての都市”

サンパウロという街×アートをテーマに、2月13日(金)まで駐日ブラジル大使館で開催されている展覧会
「Confluence Tokyo São Paulo」。
その関連イベントとして行われたクロストーク
「なぜ若者はブラジルを目指すのか?サンパウロで過ごした1年と、現在の仕事・アート」は、ブラジルという国の「創造性の正体」に迫る、非常に濃密な時間となった。
登壇したのは、写真家、建築家、そして若い時代にブラジルでの生活を経験してきた実践者たち。
それぞれの立場から語られたのは、単なる海外経験談ではない。
サンパウロという都市が、いかにして人の価値観や人生を揺さぶるのかという、生々しい実感だった。
文化は「鑑賞するもの」ではなく、「暮らしの中にあるもの」

Photo:O-DAN
トークの中で繰り返し語られたのが、サンパウロでは文化やアートが特別な場所に隔離されていないという事実だ。
イビラプエラ公園では、散歩の延長線上に美術館があり、街を歩けば、壁画やグラフィティが日常の風景として目に入ってくる。
アートは見に行くものではなく、気づけばそこにあるものなのだ。
さらに印象的だったのは、政府や銀行といった大きな組織が、文化や芸術を「余剰」ではなく、都市を成立させる基盤として本気で支えている点である。
街全体が会場になる一夜、「Virada Cultural」

Photo:O-DAN
その象徴として語られたのが、サンパウロ名物のカルチャーイベント「Virada Cultural(ヴィラーダ・クルトゥラウ)」。
一晩中、街全体が会場となり、音楽、演劇、ダンス、パフォーマンスが同時多発的に立ち上がる。
そこに明確な境界線はなく、市民も観客も、いつの間にかその一部になっていく。
登壇者の言葉が印象的だった。
「文化は特別な場所に行くものではなく、街そのものに埋め込まれているんです」
この感覚こそ、日本で育った若者がブラジルに強く惹きつけられる理由なのかもしれない。
若い時代のブラジル体験が、人生を変える

Photo:O-DAN
今回登壇した3名はいずれも、若い時代にブラジルへ渡航した経験を持っている。
そしてその体験は、偶然ではなく、人生の方向を大きく変えるターニングポイントとして語られた。
都市、自然、人、歴史、移民の記憶。
サンパウロは、それらが混じり合い、矛盾を抱えたまま前に進む都市だ。
だからこそ、完成された答えではなく、「問い」を持ち帰らせてくれる場所なのだろう。
日本では感じられない「ブラジル」を、若い世代へ
イベントを通して強く感じられたのは、この感覚を、次の世代にどう手渡していくか、という問いだった。
そうした中で紹介されたのが、ブラジル日本交流協会(ANBI)による研修留学プログラムである。
ANBIは40年以上にわたり、800人以上の日本の若者をブラジルへ送り出してきた非営利団体だ。
「働きながら、学ぶ」を掲げ、観光では決して見えない、ブラジルの日常そのものに飛び込む一年間を提供している。
国際協力、教育、文化芸術、農業、観光、医療まで、多様な分野で活躍するOGOBネットワークは、ブラジルという“多様性のるつぼ”を体現していると言っていい。
サンパウロは、アートであり、プロセスである

クロストークを通じて浮かび上がったのは、ブラジル、そしてサンパウロが完成された文化ではなく、生成し続けるプロセスそのものだということだった。
混ざり合い、ぶつかり合い、矛盾を抱えたまま更新され続ける都市。
だからこそ若者は惹きつけられ、自分自身の価値観を試しに行くのだろう。
日本では感じられないブラジルを、次に体験するのは、あなたかもしれない。
イベント情報

「Confluence Tokyo São Paulo」
会期:2026年1月16日(金)–2月13日(金)
会場:駐日ブラジル大使館
主催:JBAC ジャパン・ブラジル・アートセンター
助成:駐日ブラジル大使館/ギマランイス・ホーザ文化院
協力:サンパウロ・ビエンナーレ財団
関連イベントの詳細は
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