【大阪・関西万博】[43]ブラジル館が「平和のためのコンサート」開催
10⽉5⽇(⽇)ブラジル館にて「芸術に戦争はない」をモットーとする「オーケストラ・ クリアンサ・シダダン(市⺠の⼦どもオーケストラ・OCC)」による「平和のためのコンサート」が開催された。
ブラジル、韓国、北朝鮮、ロシア、ウクライナ、イスラエルやイラン出⾝の25名の⾳楽家が奏でる希望と和解のメッセージは、来場者に深い感動を与えた。
メンバーのなかには、戦闘で家族を失った若者も含まれています。
ブラジル館パブロ・リラ館⻑は、「平和は、すべての⼈々の未来に種を蒔き、より良い未来を保証するための最良の⼿段です」と強調する。
「オーケストラ・クリアンサ・シダダン」の発案者・総合コーディネータであるジョアン・タルジーノ⽒は、「⾳楽は平和のメッセージを伝えるものであり、これは現代において最も重要な課題です」と述べる。
同オーケストラは、国連やユネスコから社会的インクルージョンのモデル事業として認められている。

ジョアン・タルジーノ⽒
⾳楽家たち
⾳楽家のダヴィ・クリスチアン・アルヴェス⽒(26歳)は、19年間にわたり「オーケストラ・クリアンサ・シダダン」のメンバーとして活動してきました。
同⽒はチェロの学⼠号を取得しており、「オーケストラの⽀援がなければ、家族に学費を負担してもらうことはできませんでした」と語ります。
現在は同オーケストラの教員として後進の指導にあたっています。
これまでに、イタリア、アルゼンチン、スイス、ポルトガル、イスラエル、パレスチナ、
韓国、⽇本など、各国で演奏活動を⾏ってきました。
「平和のメッセージを音楽で伝えられることは、私にとって大きな喜びです」と同⽒は語りました。
⾳楽家のジョアン・ヴィクトル・フェリックス・ジ・アラウージョ⽒(18歳)は、8歳のと
きに演奏を始め、打楽器を専門に選びました。
今回が初めての海外公演となり、平和のメッセージを世界に広めることに大きな期待を寄せています。
現在は法学部に通いながら、今後も打楽器の演奏を続けていきたいと話します。
「オーケストラは⼤学と提携しており、奨学⾦を受けています。
『芸術に戦争はない』というモットーが、このツアーで最も⼤切なものです」と語りました。
ウクライナ出身でイタリア在住のオレクサンドル・プザンコフ氏(25歳)もメンバーの一人です。
ウクライナではすべての男性が戦争に動員されており、祖国に残る家族は無事ですが、数人の友人を失ったといいます。
祖国では毎日のように爆音や警報が鳴り響いているそうです。
プザンコフ氏は大学で音楽を専攻し、約15年間ヴァイオリンを弾き続けています。
「音楽には香りがあり、ブラジル館でさまざまな国籍の音楽家たちと共演できたことは本当にすばらしい経験でした」と語りました。
もう一人のメンバーは、イスラエル出⾝のシモン・レンベルスキ⽒です。レンベルスキ氏は、「⼤阪・関⻄万博のブラジル館で演奏できたことは、⾮常に意義深い経験でした。
広島での公演では、⽇本の皆さんがとても親切にサポートしてくださり、今回も温かいご⽀援を感じました」と、⽇本の観客への感謝を述べました。
⽇本とのつながり
「オーケストラ・クリアンサ・シダダン」は⽇本とも強いつながりをもっています。
⽇本の著名なヴァイオリニスト・久保陽⼦⽒との共演により、アルバム『ConcertosdeBachpara violinoeorquestraporOrquestraCriançaCidadãeYokoKubo(バッハ:ヴァイオリンと管弦楽のための協奏曲―オーケストラ・クリアンサ・シダダンと久保陽⼦)』(CD+DVD)が、2015年にローマで録⾳されました。
ブラジル館での公演に先⽴ち、同オーケストラは広島平和記念公園および広島YMCA国際⽂化センターで公演を⾏い、本ツアーの象徴的かつ精神的な意義を⽰しました。
万博での公演後、10⽉8⽇には、同オーケストラはバチカンのサン・ピエトロ広場で、ローマ教皇レオ14世の前で公演を⾏います。
⽬的
「オーケストラ・クリアンサ・シダダン」の⽬的は、⽣徒たちに尊い価値観を伝え、市⺠としての育成を促すとともに、プロの⾳楽家を育成することにあります。
現在、7歳から21歳までの450⼈の⼦どもや若者が、ペルナンブコ州レシフェ市内の3つの拠点で、クラシック⾳楽のほか、弦楽器や⼸の製作・修理技術を学んでいます。
このプロジェクトには、教育⽀援に加え、⼼理的サポートや医療・⻭科医療の提供も含まれています。
また、デジタルインクルージョンの取り組みや、⼀⽇3⾷の⾷事、制服の⽀給も⾏われています。
「平和のためのコンサート」は、「オーケストラ・クリアンサ・シダダン」を構想し、コーディネータを務める判事ジョアオ・ジョゼ・ロシャ・タルジノ⽒によって開始されました。本活動は、⾳楽を通じて社会的インクルージョンを推進することを⽬的としており、2006年に、ペルナンブコ州州都レシフェや⾸都圏の⼈間開発指数(IDH)が低い地域に住む貧しい若者にクラシック⾳楽を教えるために始まりました。
課外活動の⼀環として、成績優秀者には⼤学との協働による授業や、国外での留学の機会が提供されます。
すでに、ポーランド、オーストリア、チェコ共和国、ドイツ、メキシコ、カナダ、スペインなどに、⾳楽を学ぶ留学⽣を送り出しています。
同オーケストラは、すでに30以上の賞を受賞しています。
また、国連により2010年12⽉には社会的インクルージョンのモデルケースに選ばれ、2015年には⽂化と平和のための活動を⾏う国際ネットワーク「ユネスコスクール」の加盟校となりました。
本オーケストラは、ラテンアメリカの⾳楽学校として初めて、同プログラムの加盟校に認定されています。
来場者
兵庫県から来場した⻑坂知⾳さん(左)は、「ウクライナ⼈とロシア⼈による⼆重奏、イス ラエル⼈による⼆重奏の演奏に、平和のコンセプトが強く感じられました。
⾳楽は世界平和につながる⼀つの⼿段になり得ると感じます。
こうした公演を万博という舞台で⾏うことに、⼤きな意義があると思いました」と語りました。
また、兵庫県から来場した鶴⽥直樹さんは、「ブラジルにはサンバやポップスのイメージがありましたが、クラシック⾳楽の演奏は意外で、とても素晴らしかったです」と感想を述べました。
披露された曲
ブラジル館で披露された曲は下記の通りです。
プログラム
エイトル・ヴィラ=ロボス
ブラジル⾵バッハ第4番前奏曲(序奏)W264,424
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
2つのヴァイオリンのための協奏曲BWV1043
I.ヴィヴァーチェ
II.ラルゴ・マ・ノン・タント
III.アレグロ
ハン・テス
ザ・ビューティフル・ネイション
イタイ・ダヤン
ラプソディ・オブ・ザ・ネイションズ
アストル・ピアソラ
フーガと神秘
メドレー(編曲:ニウソン・ロペス)
マルコス・ヴァリ:サンバ・ヂ・ヴェラン
ゼキーニャ・ヂ・アブレウ:チコ・チコ・ノ・フバ
レビノ・フェヘイラ:ウルティモ・ジア
「オーケストラ・クリアンサ・シダダン(市⺠の⼦どもオーケストラ・OCC)」