4月6日ブラジルの国民的漫画家ジラルド氏が死去
去る4月6日、日本でも出版された『フリチッス(FLICTS)』(1969年)や、『やんちゃなマルキーニョ(O Menino Malquinho)』(1980年)の作者であり、何世代にもわたって子どもたちの想像力をかきたてる数百もの物語やキャラクターの作者であるジラルド氏が91歳で亡くなった。
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ジラルド・アルヴィス・ピント
Ziraldo Alves Pinto(ジラルド・アルヴィス・ピント)
1932年10月24日生まれ、ブラジルの作家、画家、漫画家、ジャーナリスト。
彼の代表作であり、非常に人気の高い『O Menino Maluquinho』は、ブラジルで最も成功を収めた児童書の一つであり、映画やテレビシリーズの原作にもなった。
ジラルド氏が初めて作品を発表したのは、1938年、学校に通い始める1年前の6歳のときであった。
地元ミナスのフォーリャ新聞に掲載され、才能が認められると1953年から新聞社でイラストレーターとして働き始めた。
風刺画を得意としたジラルド氏は雑誌や全国紙にも連載を持つようになり、ブラジル全土でその人気を不動のものにした。
1960年にはブラジル初の単独作家によるコミック本『ATurma do Pererê』を発表。
これはブラジルの民間伝承のサシ族を主人公にした、ブラジルの伝統的な価値観を踏襲しながらも時事ネタを取り込んだ風刺作品だ。
ジェレミアス・オ・ボン、スーパーマンイ、オ・メニーノ・マホンといったキャラクターを次々と生み出しては、読者を魅了した。
ジラルド氏はまた、他の進歩的な芸術家たちとともに、ブラジルの軍事独裁政権時代に、型破りなコミック新聞『O Pasquim』を創刊した。
リオデジャネイロを拠点とするこのタブロイド紙は、軍政に対するユーモラスな批判で人気を博した。
ジラルド氏には二人の子供がいる。一人は、映画監督のダニエラ・トーマス。もう一人は、ゴールデングローブ賞にノミネートされた映画音楽作曲家のアントニオ・ピントである。
アントニオ・ピント代表作
セントラル・ステーション
ブラジル音楽との繋がり
INTERPRETA
ブラジル音楽好きなら誰しもが一度は見たことがあるだろうこのアルバム。
ゴンザギーニャ、カエターノ、イヴァン、ミルトン、当時MPB界でトップだった4人のアーティストの曲をクァルテット・エン・シーがカバーした名盤。まだ手にしたことがない人は、是非聞いてほしい。今ならAmazonで1000円近くで購入することが可能だ。
アーティスト:QUARTETO EM CY
原題:QUARTETO EM CY INTERPRETA:GONZAGUINHA・CAETANO・IVAN・ MILTON
邦題:クァルテット・エン・シー 砂の岬:ゴンザギーニャ、カエターノ、イヴァ ン、ミルトンを歌う
レーベル:Philips
録音年:1980年
FLICTS
ジラルド氏自らが手がけている児童書『FLICTS』は「尊敬と自己受容についての寓話」 『フリチッス』虹の中で自分の居場所を見つけられない色、フリチッスの物語である。 彼女には旗の緑も空の青も太陽の黄色もなく、赤のような強さもない。 そのため、フリチッスは仲間外れにされ、自分の愛を求めて旅に出る。
それにフィーチャーした本作のアルバムの表紙はそれぞれの色をもった子供達がフリッチスの周りを囲み歌い、裏表紙には物語のラストの絵が描かれている。
クァルテット・エン・シー、MPB4、セルジオ・ヒカルドが参加しているアルバム
アーティスト:QUARTETO EM CY MPB4 Sérgio Ricardo
原題:FLICTS
レーベル: Philips
発売:1980年
ジラルド氏が手がけたレコード/CDジャケット
セルジオ・ヒカルドや、マストゥルス・コン・レイチなど。様々のアーティストのジャケットを手がけている。
ブラジルの著名人からのコメント
「モニカ&フレンズ」で有名なマウリシオ・デ・ソウザ
「なんて悲しいんだろう!言葉もありません。
偉大な友人以上のものを失った。兄弟を失った。文字の、特徴の、そして人生の!
でも、彼はいつも私の心の中にいる。
そして、彼の作品を愛し続ける、あらゆる年齢層の何百万という熱狂的なブラジル人の心の中にも。
ジラルド万歳!」
マウリシオ氏が描いている漫画の主人公が7歳に対し、ジラルド氏は10歳の男の子をモチーフにした漫画を描いていた。
Ivan Lins
@ivanlinsoficial(歌手)
Ziraldo foi uma pessoa fundamental em minha vida. Seus personagens eram humanistas, bonitos, encantadores. Me faziam muito bem. Meu favorito era o “Jeremias, o bom”. Contador de histórias, pensador, frasista e muito inteligente. Brasileiro consciente, o conheci quando ele (+) pic.twitter.com/ltixa6Y2SC
— Ivan Lins (@ivanlinsoficial) April 7, 2024
Clarice Falcão 🎵 Ouça o disco TRUQUE 🎵
@euclarice(歌手)
aqui ele lançou a braba pra todo mundo que já se sentiu excluído, desajustado ou diferente.
na época em que sofri bullying na escola me ajudava pensar que eu era flicts.
obrigada ziraldo 🤎 pic.twitter.com/FzcW6RdueE— Clarice Falcão 🎵 Ouça o disco TRUQUE 🎵 (@euclarice) April 7, 2024
emicida
@emicida(ラッパー)
Um gênio brasileiro a quem somos gratos eternamente. pic.twitter.com/s24prH4M2V
— emicida (@emicida) April 6, 2024
Lula
@LulaOficial(大統領)
O Brasil perdeu neste sábado, 6/4, um de seus maiores expoentes da cultura, da imprensa, da literatura infantil e do imaginário do país. Chargista, caricaturista, escritor e jornalista, o mineiro Ziraldo é nome onipresente na cultura popular brasileira. O Menino Maluquinho, seu…
— Lula (@LulaOficial) April 6, 2024
終わりに
ジラルド氏の訃報はブラジル国内においてどれだけのインパクトだったか計り知れないが、影響力が垣間見えるような言葉を残している人物がいる。
ジラルド氏と親交が深くヴィニシウス・ジ・モライスの盟友であり、国民的な文化的シンボルであるカルロス・ドラモンド・デ・アンドラーデ氏(1987年没)の生前の言葉を引用して締めくくりたいと思う。
カルロス・ドラモンド・デ・アンドラーデ
「ジラルドは正しい。本当の子供時代とは、彼がチョコレートパイのようにおいしい絵と詩で語ってくれるものだ。その時代を生きた人はそれを知っている。そうでない人は…非常に残念なことなんだ」
出典:カルロス・ドラモンド・デ・アンドラーデ、ジラルドと “O Menino Maluquinho “より